B.island(新潟県立万代島美術館ニュース)第20号-4「「芳年」展を振り返って」

この春、企画展「芳年 激動の時代を生きた鬼才浮世絵師」を開催しました(会期:2021年3月20日~5月5日)。幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師・月岡芳年(つきおかよしとし/1839~92)の画業を紹介する、当館初の本格的な浮世絵展でした。ここでは、本展の振り返りとして、会期中に行った二つの試みについてご紹介します。

一つ目は、「芳年展を10倍楽しむ 10分間ミニトーク」(実施日:3月27日、4月11日、4月24日)です。コロナ禍のため、本展においては講演会やワークショップ等の開催を見送りました。そのなかで唯一行うことができた関連事業が、この「ミニトーク」でした。

「作品解説会」は通常、展示室内で行いますが、作品の前に大人数が集まると“密”になる恐れがあります。今回は感染症対策のため、①ロビーでモニターに映像を映しながら解説する、②10分間の短時間とする、③定員10名の少人数とする、④1日4回実施し、参加者を分散する、などの措置をとることにしました。

結果として、各回とも程よい人数で実施することができました。「短時間」なので気軽に参加でき、また「1日4回」としたため、偶然、飛び入りで聴くことができた、という方も多かったようです。なお、ロビーでの解説という点ですが、やはり解説は会場で聞きたいというニーズが一般的でしょう。このため今回は、作品鑑賞時に注目してほしいポイントに焦点を当ててお話しするよう心がけました。「血みどろ絵」で血の質感にリアリティを与えるために用いられている膠(にかわ)の光沢は、作品の前で少しかがむと見えやすい、など実践に生かせる内容も交えました。

もう一つの試みは、新潟県立美術館友の会からご協力いただき、「芳年キャラカード」を製作したことです。

出品される芳年作品の中から、キャラクター性の際立つ9人の登場人物を選び、デザイナーさんに素敵なカードを作っていただきました。これらを芳年展入場の際、お一人様につき一枚、観覧券の代わりに差し上げました。3種類以上集めた方には、スペシャルカード(芳年名作カード)をプレゼントし、来館者増を期しました。さらに展覧会終盤には、芳年の誕生日が4月30日(旧暦3月17日)であることに因んで「芳年生誕祭」を開催し、カードセットなどの特別プレゼントを行いました。

実は本展会期中、ミュージアムショップが諸般の事情で休店となり、図録以外の関連グッズは販売できないことになってしまいました。展覧会グッズを楽しみに来場される方も多い中、「芳年キャラカード」には、ささやかながら来場の記念になればとの思いもありました。

「芳年」展の来館者アンケートを見ると、60代以上より20~30代の若年層のほうが多いなど、浮世絵の展覧会としては少し意外な結果となりました。一人で来館され、時間をかけてじっくりご覧になるお客様も多かったようです。幅広い層のお客様にご来場いただき、今後の浮世絵の紹介に可能性を感じることができたのは、本展の大きな成果だったと考えています。


10分間ミニトークの様子

芳年キャラカード

(新潟県立近代美術館主任学芸員 長嶋圭哉)