昨年、当館所蔵作家である田畑あきら子の評伝が、岩波書店から刊行されました。著者の駒村吉重さんは、版画家・藤巻義夫の評伝『君は隅田川に消えたのか――藤巻義夫と版画の虚実』(講談社、2011年)などで知られるノンフィクション作家です。この藤巻義夫をめぐって、田畑が知られるきっかけとなった『芸術新潮』の連載「気まぐれ美術館」の洲之内徹と、1970年代に田畑の遺作展をいちはやく開いた画廊主・大谷芳久とのからまる「奇妙な糸」が、本書にも詳しく語られており、おそらく著者が田畑の評伝を書くに至った経緯もここに...