亀倉雄策が平和への願いを込めたポスター「ヒロシマアピールズ 1983」

美しいたくさんの蝶が燃えながら落下していく情景が描写されたポスター《ヒロシマアピールズ 1983》(1983年 ※イラストレーション:横山明)は、東京オリンピックや大阪万博の仕事と並ぶ、亀倉雄策の代表作です。

日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)と広島国際文化財団による共同事業である「ヒロシマ・アピールズ」は、言葉を超えて「ヒロシマの心」を世界に訴えることをテーマにポスターを毎年1点制作するキャンペーンです。この第1号ポスターを手掛けたのが、当時JAGDAの会長だった亀倉雄策でした。

このポスターを制作するにあたり、亀倉は、あらゆる政治、思想、宗教を超えて純粋に中立の立場を守ること、美しさと品格がありながら、人々の心に強く語りかけることを念頭においたといいます。

確かに、このポスターには、直接的に戦争や原爆を指し示す要素はありません。しかし、「燃え落ちる蝶」という鮮烈なイメージは、私たちの心に強く飛び込んできます。それは言葉の異なる国においても同じであるに違いありません。そしてそのことがまさしくグラフィックデザインの力なのでしょう。

本展では、イラストレーターの横山明が亀倉の依頼で制作したポスターの原画(川崎市市民ミュージアム所蔵)と、ポスターの制作にあたって亀倉が描いたアイディアスケッチをあわせて展示しています。3点をあわせてご覧いただける貴重な機会です。

 

終戦から70年の今年、亀倉雄策が《ヒロシマアピールズ1983》に込めた平和への祈りを、是非感じ取っていただきたいと思います。

皆様のお越しをお待ちしております。